2.一畑電車の社会的評価.

(1) 社会的便益の計測
(2) 一畑電車の鉄道企業としての効率性の検討

2.一畑電車の社会的評価

鉄道が社会にもたらしている便益は、「利用者に帰属する便益」、「事業者に帰属する便益」、および「その他の主体に帰属する便益」に分けて考えることができる。それぞれの便益が必ず正であるとは限らず、負となる場合もあるが、それも含めてこれらのすべてを合計したものが社会全体の便益である。民間事業としての鉄道にとって最も重要なことは、事業者に帰属する便益である採算性であるが、地域にとって重要なことは、社会全体にもたらされる便益である。以下では、代替として考えられるいくつかの交通機関と比較することによって、社会的な全体便益の面から鉄道としての存続の可否を検討する。

(1)社会的便益の計測

鉄道にかわって公共交通サービスを提供することのできる手段として乗合バスなどいくつかの選択肢がある。ここでは新しいシステムも含めて下記の3つを比較対象として検討する。

    1. 既存の鉄道施設を活用したレールバス
    2. 軌道を全廃して国道431号等を利用する乗合バス
    3. 軌道敷を利用して新たな施設を設けるガイドウェイバス

計測した便益は、下記の項目である。

表1は、それぞれの手段についてそれぞれの効果を計測した結果を示したものである。

まず、事業者に帰属する便益はいずれもマイナスであるが、初期投資が必要なレールバスやガイドウェイバスが大きなマイナスで、電車はそれに続き、乗合バスが最も小さい。採算性で選ぶなら乗合バスが最もよいことがわかる。

しかしながら、所要時間短縮効果は、電車とレールバスが大きく、自動車交通事故軽減効果と道路交通混雑緩和効果でも電車とレールバスが大きい。乗合バスは道路上を走行するため、道路混雑に巻き込まれて所要時間が大きくなるほか、道路混雑を引き起こす原因ともなる。レールバス・ガイドウェイバスは、便益においては鉄道と同等かうわまわるものの初期投資が大きい。鉄道と乗合バスの比較では、採算では乗合バスが有利だが、便益の全体では鉄道が優位である。

 

(2)一畑電車の鉄道企業としての効率性の検討

前項の分析では、一畑電車の便益は大きいが採算は難しいということが示されており、存続のためには、地域として支えていくことが必要となる。しかしながらその場合、鉄道として可能な限りの高い効率性・生産性を有していることが必要であり、非効率な事業を公的に支えるべきではない。そこで、一畑電車の効率性について類似した条件下にある地方民鉄との比較の上で検討する。

高い効率性

平成12年度の営業キロ当たりの職員数は、平成8年度と比べて更に少なくなっており、一畑電車新経営改善計画の期間において、その目標値は確実に達成されている。また、類似事業者の平均値の半分程度となっており、優れた効率性を有するものとなっている。

職員一人当たりの車両走行キロ、営業収益及び輸送人員も、平成8年度と平成12年度との比較においていずれも改善されており、特に職員一人当たりの車両走行キロは類似事業者による平均値の倍近くと格段に高いものとなっている。

経費削減に向けた積極的な取組み

鉄道事業の営業経費の中で人件費の占める割合は一般に高く、経費削減のためには人員削減や運行業務の外注化・機械化等を進める必要がある。その指標として営業経費(諸税・減価償却費除く)に占める人件費割合を見ると、平成8年度と平成12年度との比較では類似事業者の平均値の変化がほとんどない中で、一畑電車は2割弱の削減を達成しており、経費削減に向けた積極的な取組みが伺える。

以上のように一畑電車は効率的に運行されていると考えることができる。今後においてもさらなる努力が期待されるが、地域として支えていく価値のある優れた鉄道であると評価できる。


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