(1) 鉄道としての存続とその条件
(2) 大社線についての検討
(1)鉄道としての存続とその条件
一畑電車は経営的には厳しく、バス転換すれば採算は改善される可能性があるが、利用者にもたらされる便益や、道路負荷の軽減に果たしている役割が大きく、鉄道として存続することの価値は大きいと言える。また、今回の分析では便益として数量化はしていないが、駅周辺の土地利用価値の増大、観光振興への貢献など地域社会全体にとって重要な役割も有している。しかしながら、これまでと同様の運行形態で民間企業として独立に存続することは難しく、存続のためには地域による適切な支援が必要である。
以上より、一畑電車は地域における社会基盤であるととらえることが重要であり、事業者と地域が一体となって支えていくべきであると考えられる。ただし、その際には、下記のような条件を備えている必要がある。
- 鉄道事業者としての効率性が引き続き確保されること
- 国・県・沿線自治体による適切な関与が行われること
- 公的な負担は、赤字を無条件に補填するためのものではなく、地域にもたらされる便益に対する地域としての適切な負担として行われるものであること
- 事業者と地域の両方が、互いに協力連携し、利用促進・収支改善・安全性確保等に向けてそれぞれ最善の努力を果たしていくこと
- 地域および利用者の期待に応え得るより質の高い輸送サービスの提供に向けての具体策が実行されること
(2)大社線についての検討
一畑電車全体の収支が厳しい中で、大社線(川跡・出雲大社前間)については、特に利用者数が少ない状況であるため、別途検討した。
その結果、下記のような点が明らかとなった。
- 大社線は営業係数が319円で、北松江線の146円より経営効率が悪い。
- 大社線の利用客は638人/日であり、611人/日(96%)が北松江線に乗り継いで利用している。したがって、大社線を廃止した場合は、北松江線の需要が減少する懸念がある。
- 仮に大社線を廃止して代替バス輸送に転換した場合については収支の動向をモデル分析した結果、大社線から北松江線に乗り継いでいた利用客の401人/日(93%)は引き続いて利用するものと予想される。
- 但し、バスと鉄道を乗り継いで利用することは、時間ロスや不便さなどのわずらわしさがある。
- 大社線は、松江市方面から観光需要を中心とした特定時期(正月三が日等)の定期外利用が多いが、バスと鉄道の乗り継ぎとした場合には観光客にとって大変不便となり、利用客が減少する。
以上のような分析結果から、大社線のみを単独でみれば廃止によって赤字を縮小できる(約74百万円減)ものの、他区間の需要減による収支改善効果を考えると、当面、存続することが適切であると考えられる。
しかしながら、需要喚起の努力は不可欠であり、現状からの改善がみられない場合には、あらためて検討する必要がある。大社線はそれぞれ観光集客力のある松江市と出雲大社を直接結ぶ唯一の路線であり、松江市の市内観光と連携した回遊の仕組みの創出など、一畑電車を利用して出雲大社へ行く需要を掘り起こすなど需要喚起に早急に取り組むことが必要である。